違和感の正体

BCPとはBusiness Continuity Plan、「業務継続計画」のことを意味しますが、「突然つくれと言われても一体何をすればよいのか…」と戸惑う事業所も多いことと思います。

元々BCPは自らの事業=経営を有利に進めるという目的の下、工場や運送、サービス業全般などあらゆる業態において自主的に整備されてきた、ビジネス的発想によるものです。

この点確かに、介護保険事業や障害福祉サービスもビジネスであることは間違いありませんが、その本質はやはり福祉(奉仕)であり、あらゆる場面でビジネスライクに対応できるものではないことは賛同頂けることでしょう。例えば「指定訪問介護事業者は、正当な理由なく指定訪問介護の提供を拒んではならない」といった規定が存在します(指定居宅サービス等の運営基準第9条)。

ご利用者は一人で生活できないから介護サービスを利用しているのであって、当たり前ですが周囲の支援者=介助者のサービス継続にその生活、命がかかっています。「そのようなご利用者をいざというときに守ろう、サービスを続けようとすることは福祉職として当然のことであって、そのために避難訓練等をしてきたのだから、何故今になって新たにBCPなるものを策定しなければならないのか分からない」という思いでいる方も多いのではないでしょうか。特にケアマネージャーは、担当ご利用者一人ひとりの安否確認以外に何をどこまでできるか不明であり、個人情報の壁により情報共有もままならず、計画が立てづらいことと思われます。

筆者もどちらかというとこの見解であり、奉仕の世界にビジネス的発想を持ち込んだが故に違和感が生じているのではないかという思いが拭えません。しかし、コンプライアンスの観点からは、法令で決められた以上従っていく必要があります。また、想定外の事態への対処はつい後回しになりがちですので、普段の避難訓練等とは別角度からリスク対策を構築する良い機会にもなるでしょう。

本稿では、事業形態別に実効的なBCPを策定するためのポイント等を解説します。

 

介護事業所におけるBCP策定の義務化

令和3年度の介護報酬改定

令和3年4月の「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」により、2024年までに全介護施設・事業所(障害福祉サービスも同様)がBCPを策定することが次の通り義務づけられました。

感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、全ての介護サービス事業者を対象に、業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等を義務づける。

なお、期限までにBCPを策定しなかったとしても罰則等はありませんが、BCPやマニュアルの策定を怠った結果、実際に災害等が起き被害を出してしまった場合は、被害者であるご利用者や職員に対し法人が賠償義務を負う可能性が高まります。その意味ではBCP策定は「待ったなし」といえ、現場で実践可能なBCPをともかくも整備しておくことは重要といえます。特に、川沿いや崖の近くにある施設など、個別に特に甚大な被害が予測されるような事業所は、真っ先に最悪の事態に備えた計画を講じておくべきです。

 

BCPの定義と特質

BCPとは、以下のように定義付けられます。

大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、

重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画のこと。

(厚労省ガイドラインより)

よくある質問ですが、従来の防災計画との違いは何でしょうか。文字通りですが、BCPは「継続計画」である点で防災計画と異なります。

つまり、防災計画は自然災害等が発生したときの一時的な対処についてのプランに過ぎず、いわば「点」について備えておくものです。

一方BCPは事業を継続させ、或いは少しでも早く復旧させるための「計画」ですから、そのゴール=元の業務回復までの一連のプロセスについて定めるもの、つまり「線」なのです。

そのため、どうしても防災計画よりはボリュームが大きく、複雑になってしまいます。あれもこれもと欲張らず、まずはシンプルな骨格を仕上げる意識で作成しましょう。

 

具体的に義務化されている内容

①新型コロナウイルス等の感染被害を想定したものと、②地震や水害等の自然災害を想定したものの二種類を作らなければなりません。現実には、コロナの感染拡大期に震災等が起きれば、避難所でクラスターが発生するなどのいわゆる複合災害に発展することもあるでしょう。その意味では事前に対策できることにも限界があり、また②についても地震、台風、火災…等とあらゆる災害別に複数BCPを作ることまでは義務付けられていないため、まずは最も起こる可能性が高い災害のみ作成すれば足ります。

 

介護事業所に求められる対応

厚労省や各団体が分厚いマニュアルを発行していますが、筆者のスタンスとしては前述のとおり「いかにスリム化するか」が重要であるという考えです。以下は100パーセント私見となりますが、飽くまで参考としてご活用ください。

中核となる考え方(目標)は、

常に最悪を想定した上で、ご利用者の命を守る」ということです。

①=新型コロナウイルス等の感染被害(施設においてはクラスター)

②=地震や水害等の自然災害 を意味します。

 

施設(グループホーム含む)がやること:

① ご利用者の命を一人でも多く繋ぐこと

② ご利用者の命を一人でも多く助けること

 

デイサービスがやること:

① 一時休止する条件を決め、そのとおり動くこと

② ご利用者の命を一人でも多く助けること お泊り機能を高めること

 

ショートステイ(小多機、看多機含む)がやること:

① 不用意に帰宅させ感染を拡大させないこと

② ご利用者の命を一人でも多く助けること 3~7日間分の食料、消耗品等を備蓄しておくこと

 

訪問介護・看護、福祉用具がやること:

① 訪問や稼働を中止する条件を決め、慎重に判断すること

② 担当するご利用者の命を助けること ケアマネと連携して避難誘導すること

 

ケアマネージャーがやること:

① 個別業務や稼働を中止する条件を決め、慎重に判断すること

② 個別避難計画書を作成し、他事業所と連携しご利用者の安全を確保すること

各該当先にてご対応いただきたい内容につきましてはそれぞれ別記事にて詳細に解説しておりますので、内容をご確認いただき今後の運営にお役立ていただけたらと存じます。

 

「BCP策定に向けて介護事業所が行うべきこと –介護施設編-」

 

「BCP策定に向けて介護事業所が行うべきこと –デイサービス・ショートステイ・訪問介護編-」

 

「BCP策定に向けて介護事業所が行うべきこと –ケアマネージャー編-」

 

いずれにも共通しているご利用者様の命を守っていただくために、しっかりとご準備をしていただくことが今後の対応として大変重要になります。

 

当事務所のサポート内容

ことBCPに関しては、特に在宅系ではまだ全貌が明らかとなっていないこともあり、当事務所で真に価値のある明確なサービスをご提供することは難しい状況です。

もっとも、お仕着せではない、実践可能なBCPを施設・事業所の皆様と一緒に考えていくことはできます。一方で施設に関してはやることははっきりしており、モデル規定のご提供、策定会議における助言、一度作成されたBCPのチェックやアドバイス、内部研修等が可能です。

新型コロナウイルス等の感染症に関しては、災害と異なりじわじわと起きていくものなので、日常の秒単位での素早い対策が重要となります。顧問弁護士サービスをご利用頂くことで、例えば訪問介護で「職員で陽性者が出たが、マスクはしていたのでご利用者は濃厚接触者には該当しない。それでも関係者全員に知らせるべきか」といったお悩みにお答えすることが可能となります。ことコロナウイルスは正解が無い難問も多い、不透明な世界ですので、介護トラブル専門家のアドバイスを是非ご活用ください。

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