ケアマネージャー向けのBCPと個別避難計画

今回は主に、在宅のケアマネージャー向けの話になります。

 

令和4年の3月16日の夜、大きな地震が起こりました。特に福島や宮城では震度6強を観測しており、大変大きな損害が生じたわけですが、1ケアマネジャーとして考えた時、こういった突発的な災害時に、自分が担当するご利用者をどうやって助けることができるのか、普段からどんな備えをすればいいのか、改めて考えておくことの必要性を痛感した方も多いと思います。

 

今回はそうした災害時、法的にはどうなっているのかを整理してお伝えします。

 

個別避難計画とは

災害に関する法律で一番大事なものに、『災害対策基本法』があります。略して“災対法”と言いますが、これが昨年改正されまして、“個別避難計画”というキーワードがあります。

 

これは、1人では避難できない方をサポートし、どういう経路・方法で避難するかを、個別に計画を立てるというものですが、その個別避難計画が努力義務化されました。そしてここが肝心なのですが、誰がその義務を負うのか、それはケアマネージャーではなく市町村です。あくまで市町村がそういった義務を負うと、昨年改正がありました。

 

BCP(業務継続計画の策定)とは

では、ケアマネージャーはどんな義務を負うのか。これは昨年の報酬改定に伴いBCP、“業務継続計画の策定”というものが、全ての事業所に義務化されました。(※3年間の猶予措置あり)

 

要するに、「このBCPを作る必要があることはわかっているけれど、何を書けば良いのかわからない。どうしても着手できない」というお悩みが多いと思いますが、個別避難計画との兼ね合いでどう考えればいいのかが問題になります。

 

これはあくまでも原理原則として市町村が主体的に行うべきことなので、市町村としてはケアマネージャーにお願いをするという立場です。地域によっては、そういった避難計画の策定を委託する、要するに対価を払って作成しているところもあるようです。ですがそれは各々の市町村で、勉強会などの個別の取り組みがあると思いますので、ホームページなどを是非チェックして頂ければと思います。

 

令和3年7月6日に内閣府と厚生労働省が連名で、避難計画とBCPについてそういったお願いを、一般社団法人日本介護支援専門員協会に対してしているのですが、事務連絡だけを見ても、具体的にケアマネージャーがどこまで個別避難計画の策定に関わればいいのかは、はっきりとしていません。

 

個別避難計画には何を書けばいいのか

そもそもこの個別避難計画はどんなものなのか、インターネットで「個別避難計画 雛形」で検索しますと結構いろいろなものが出てきます。その中で、福知山市の避難支援計画のモデルを簡単にご紹介します。

 

1、2枚の紙で収まる大変シンプルなものですが、登録者の基本的な情報、名前・生年月日・住所・電話番号、そして支援に関する情報支援が必要な理由、或いは支援してほしい内容、元気であるかを伝える印、緊急通報システムの有無や設置、避難支援に関する情報として昼間過ごす部屋の位置、避難経路を確保するにはどちら側にベッドがあり、いつもどこで寝ているか、避難支援者や関係者確認欄もあります。結構プライベートなことまで情報として持っていないとやはり救出できないこともありますので、そういった細かなことまで書かれています。

 

これを市町村が、地域に住んでいる全ての要支援者、介護度3~5の方のために作る際(※介護度1~2などの軽度の方は作らないわけではなく、希望があれば作る)、大きな障壁となるのが個人情報保護法です。

 

障壁となる個人情報保護法

これは本当にジレンマなのですが、最近個人情報保護法も改正されまして、より厳しくなりました。ですがその根本的な仕組みは変わっておらず、要するに個人情報は本人の同意がなければ取得してはいけないとのことなので、この避難計画を作る際、高齢者の方が認知症で後見人がいない場合、同意が得られないケースが出てきます。

 

実際にやってみると、身寄りがなく認知症である方も多いと思うので、作成が難航しているようですが、私の考えで言いますとやはり命には代えられないので、本当に緊急時の準備ですから、そこは例外として広く考えても良いのではと思います。

 

3月15日に内閣府で、個別避難計画を作成するモデル事業の成果発表会が開かれました。これは全国の、例えば茨城県で言えば常総市とか、精力的な取り組みをしているところが「自分たちの市ではこういう風に行っています」という発表をしています。

 

大体共通していたのが、やはりケアマネジャーの方にはご協力をお願いして行っているが、いろいろとハードルがあって思うように進まないとか、そういったまだ発展途上の発表が多かったです。

 

この発表を見ても、ケアマネージャーとしてBCPにどのようなことを書き、ご利用者の個別の避難にはどういったサポートをしていけばいいのか悩んでしまいます。

 

BCPには何を書けばいいのか

ここで手がかりになるのが、厚生労働省の出しているBCPに関するガイドラインです。これは主に施設におけるBCPを念頭に置いていますので、読んでもケアマネジャーはどうすればいいのかイメージが湧き辛いですが、最後の方の30ページ目にようやくケアマネについて出てきます。

 

平時からの対応、災害が予想される場合の対応、そして災害発生時の対応と分かれていまして、ざっと見ると最初の方は、「優先的に安否確認が必要な利用者について、あらかじめ検討の上、情報がわかるようにしておくこと」や、「自分の担当する利用者ごとに情報を整理しておきましょう」ということが書かれています。

 

では、いざ災害発生時に、いつどのようなタイミングで、どのような方法で、どこに避難させるのか、そことまで考えて決めてくださいとは書いていません。これは繰り返しになりますが、災対法は市町村に個別避難計画の策定を義務づけているからです。

 

ですが協力すべきではあるし、当然できる限りの協力はしたいところですが、BCPの策定は法的義務だし、何をすれば良いのかを考えますと、私の考えとしてはまずBCPは最低限のものでとりあえず作ってしまうのが大事だと思います。個別避難計画とは切り離して考えて、このガイドラインに書いてあるような、事業所をいつどういったタイミングで再開するか、或いは安否確認の手段、他の事業所との連携など、そういった基本的なことをまずBCPとして固めてしまうのが第一歩かと思います。

 

個別避難計画の作成への協力

上記の上で、個別避難計画の作成に協力するわけですが、ケアマネ側から何か協力を申し出るのであれば、まずはお住まいの市町村のホームページで防災課や、「〇〇市 個別避難計画」で検索し、個別避難計画のフォームを把握して、例えば30人ご利用者を見ているのであれば、まずは仮で5人分を作ってみるのはどうでしょうか。「この方は老老介護で避難も非常に大変だけど、崖の斜面に住んでいて危ない」とか、「次の秋に台風が来たら、本当に大変なことになる」など、そういう方を優先的にピックアップして、仮に避難計画を作ってみると良いのではと思います。

 

そうすればいろんなことが見えてきます。やはり地元の町内会やヘルパーステーションと協力しないと駄目だなといったことに気が付き、カンファレンスや会議などで発信していくと、もし市町村が精力的に取り組んでいるのであれば、防災課や福祉課などに連絡をして、「個別的な計画を考えていますが、何か協力できることはありませんか」と言えば、歓迎してくれると思います。そんな形で1人1人のご利用者の安全を確保する方法で見つけ出していくのが、一番良いのではと思います。

 

ただ、そうは言ってもやはり大きな災害が起きると自分の身内、ご家族、大変大切な身近な人も危険に晒される可能性がありますので、その人たちを置いて自分のご利用者を助けに行かなければならないということまでは、当然法律は要求していません。まずは自分の身を守る、次に大事な人を守るということで構わないと思います。

 

その上で1ケアマネージャー福祉職としてどうすべきかを考えた時に、BCPを作るのにプラスして、市町村の作る個別避難計画に協力をしていけると素晴らしいのではと思います。

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