小さな障害事業所が、あわや4000万の返還沙汰に…|実際の当事務所へのご相談事例

運営指導・監査の現状

業界では「泣く子も黙る」と恐れられる運営指導・監査ですが、役所の担当者も人の子であり、指導内容に誤りがあり、或いは指導方法が不当であるということも当然あり得るところです。現に当事務所にはおかしな指導に疑問を持つ相談がこれまで数多く寄せられてきました。中には、当事務所において現在訴訟の場で保険者による指導内容の是非を争っているケースもあります。この記事では、当事務所に実際にあった事業所様からのご相談内容から行政の指導内容が不適切なケースをお伝えいたします。

 

行政の指導内容が不適切な場合の事例

概要

障害児向けの放課後等デイサービスを数件運営する法人の一事業所に、初めて運営指導が入りました。その結果、数名の児童発達支援管理責任者が「常勤かつ専従」ではなかったとして、自主点検のうえ過誤申請を行うよう指導されました。

調べてみると、今回の指導理由は「児童発達支援管理責任者を常勤専従で配置しなかった。」というものでしたが、その認定方法が滅茶苦茶でした。

 

指導内容の「不適切」なポイント

いわゆる「常勤専従」の考え方ですが、実は「常勤」の定義が明確に定められていないという実態があるのです。

例えば、現場職員が月に勤務する時間は一日8時間×5日×4週で160時間です。

ということは、「常勤」とはその時間働けば常勤と認められるはずです。

ところが本ケースでは、その行政の担当者は「全ての事業所の中で、最長時間勤務した者を基準とする」という前提で指導してきたのです。

その考え方によると、例えば事業所で偶々忙しい月があり管理者が結果的に160時間以上働いたとして、他の事業所の管理者は全員それと同じ時間分働かなければ「常勤」と認められない、ということになってしまいます。

 

本ケースへの当事務所の対応

本件では「自主点検結果を提出すること」との指示に対し、次の文面でお返ししました。

「運営基準解釈通知(児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等人員、設備及び運営に関する基準について(平成24年3月30日障発0330第12号)には、「常勤」とは「事業所等において定められている常勤の従業者が勤務すべき時間数」に達していることをいうものとする」と定められているところ、当法人においては月160時間(もしくは168時間)を勤務すべき時間数と定めております(添付・就業規則)。」

このように冒頭で法令による基準を明確に示した上で、個別の勤務時間数と所定労働時間を比較し、それでも満たない部分については返還します、と書き提出しました。

 

行政側の反応

その結果、意外というか、案の定というか、担当者は法人に対し口頭で「それでいい」と言ってきたのです。

何とも不条理な話です。もしこちらの主張に対して、「こういった根拠があるので指導の方が正しい」といった反応があれば、フェアな議論になっておりまだ分かるのですが、このようにちょっとでもこちらが争う構えを見せただけで引っ込んでしまうのでは、はじめから確固たる考えもなしに安易に返還を命じていたと言われても仕方ないでしょう。

ということは、おかしいと思っていながら行政の言いなりになり、泣き寝入りをするのが一番馬鹿げているし勿体ない、ということです。本来行政は中立公正な立場から、利用者を守り健全な運営を促すべく事業所をサポートすべき存在です。しかし実態は、このように弱い事業所を狙い撃ちし、大人しい事業所から順番に保険料を返還させようと画策しているのではないかと邪推してしまいます。

介護・障害サービスは制度が複雑になる一方で、市区町村など最小単位の行政府の権限と責任が増大し、コロナ禍が収まらない中、役所の人たちも大変かとは思います。だからこそ、自分達の指導が事業所の命運を握っているのだという自覚をもって頂きたいと切に願います。

その他にも、軽微なミスや書類の不備を理由に、いきなり指定を取り消されたといった相談が全国から寄せられています。対行政のこの問題は事業所にとって生死を分ける究極の問題であり、非常に高度な法律問題といえます。

 

介護福祉に特化した弁護士に一度ご相談されることをお奨めします。

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