カスハラ相談窓口設置の重要性と知っておくべき基本情報~25年から完全義務化されるカスハラ対策に向けて~

カスハラ相談窓口設置の重要性と知っておくべき基本情報
~25年から完全義務化されるカスハラ対策に向けて~

介護福祉業界におけるカスハラ(カスタマーハラスメント)やセクハラに関するニュースを目にする機会が増えてきました。これまでは一般企業や店舗におけるカスハラのニュースが主でしたが、介護福祉分野での事態の深刻さにメディアも気づくようになったのかもしれません。この問題に最も危機感を覚えているのは、もちろん介護事業経営者や現場職員の皆様です。

2025年には労働施策総合推進法が改正され、対応マニュアルの策定や相談窓口の設置など、従業員を守る対策が企業に義務づけられる見込みですが、これを手放しで喜べるのかというと疑問符が付きます。なぜなら「そのような一通りの対策をしたところで形だけのものになりがち」という落とし穴があるからです。

カスハラを仕掛けてくる相手はご利用者やそのご家族ですが、立場としては「お客様」であり、利用料をお支払い頂く関係です。サービスを提供する立場からはなかなか強く注意や警告ができません。さらに介護福祉の世界では、認知症や心身に疾患を抱えている等の理由で自制が効かない方もおり、介護の専門性による解決が求められる場合もあります。このように介護福祉の現場では、ハラスメント問題はより深刻さを増します。

そもそも、これまでそれほど注目されてこなかったカスハラという現象に対し、何故法人が対策をしなければならないのでしょうか?

現場職員が実際にカスハラの被害に遭ったとして、新たに設けた相談窓口に相談することで具体的に何が変わるのでしょうか?

窓口になる職員は何をどのように判断し、いかなるアクションに繋げていくべきでしょうか?

そのために窓口担当者は、どのような訓練・研修を受ける必要があるでしょうか。

窓口運用のマニュアルはどう整備すべきでしょうか。

こうした情報・知識は、カスハラ対策がまだ始まったばかりの現状において未整備の状態であり、明確にされていません。

しかし、人材不足がますます深刻化する中で、ハラスメント対策は喫緊の課題です。出来る限り事態を深刻化させないため様々な取り組みを行うわけですが、今回はその中心となるカスハラ相談窓口について、その意義やメリット、運用にあたり知っておくべきポイントを前後編に分けて解説していきます。カスハラが発生しても、スムーズに対応できる一助になれば幸いです。

 

●本コラムで学べること

・カスハラ相談窓口を設置するメリットを理解できます

・カスハラ相談窓口運用前に知るべき基本的な知識が得られます。

・カスハラ相談窓口運用を検討する際に役立つ情報が学べます。

●本コラムはこんな方のお役に立ちます

・カスハラ問題に頭を悩ませている事業所経営者、責任者

・カスハラ相談窓口設置の準備前で情報収集をしている経営者、責任者

・カスハラ相談窓口を設置する前段階で一通りのポイントを把握しておきたい方

 

深刻化するカスハラと介護現場での影響

介護福祉業界ではカスハラ問題が日々発生しています。当事務所へもカスハラ問題に関するご相談が毎日のように寄せられ、当事務所が開催するカスハラ対策のセミナーでは、被害の深刻さを訴える受講者の方が増えています。別コラム(「カスハラの芽」)で厚労省が調査した統計データを掲載しておりますが、どの事業所もカスハラ被害を受けたことのある職員が半数以上いらっしゃいます。酷い事業所では約9割の職員がカスハラ被害経験者でした。

どの介護現場も7 割超で何かしらのハラスメントが発生している

別コラム(「カスハラの芽」)で詳しく解説していますが、介護福祉業界におけるカスハラの特徴は、単発の物やサービスを不特定多数に売るという関係ではなく、一人のご利用者の命・人生に関わる(預かる)という、よくも悪くも「濃い」関係に由来します。

通常一般の商品であれば、その商品に関するクレームや言いがかりのパターンは決まっています。一方介護福祉の場合、ご利用者の年齢や状態、好みや気になるポイントは千差万別、全てがオーダーメイドです。これに対応するのも生身の人間ですから、当然技術不足やリクエストを誤解したり忘れることもあるでしょう。生活全般に関わりサポートすることは24時間、365日ですから、続ける中で何かしら不満や軋轢が生じるものです。

更には、介護福祉の世界は「ご利用者」と「ご家族」という異なる層からの攻撃を受けやすいという特徴があります。

ご利用者は日頃から職員と接しているので関係性を作りやすいといえますが高齢化、薬剤の影響で自制が効かなくなる、認知症により攻撃性を増すなどの理由もあり対応に苦労します。

介護現場と一般企業のカスハラの違い

一方でご家族の場合、自分の親に対する思いや距離感はさまざまです。施設に預けた途端全く協力しないというドライな人もいれば、毎日のように訪問し食事介助の方法を細かくダメ出しする人もいます。預けている身内の健康や生命に関する問題が発生した場合、過敏に反応して攻撃的になりやすいといった特性もあります。

サービス提供をする職員は、目の前のご利用者と、いつやってくるか分からないご家族のカスハラの両方に恐怖するというわけです。その結果、職員のメンタルが病み休職、離職となることも多く、ただでさえ人員が少なくギリギリでやりくりしている現場の負担は増すばかり…。カスハラは百害あって一利無しなのです。

 

なぜカスハラ相談窓口が今求められているのか?

カスハラに限らずパワハラやセクハラなど多くのハラスメントは「これは間違いなくハラスメントだ」と判断しづらいのが実情です。介護中にご利用者から「何やってるんだ!それでもプロの介護士か!」と言われた場合、「これはカスハラだ」と思う方もいれば、「ご高齢だから怒りをコントロールできないのかな」と受け流す方もいます。仮にカスハラと感じても「他の職員から気にし過ぎと言われるかもしれない」とか「上司に言っても、忙しくて取り合ってもらえないかも」「それぐらいで弱音を吐くなと言われたら嫌だな…」等と考えてしまい、相談や報告というアクションに至らない場合もあります。

そこで、事業所運営側が「カスハラを受けたときに相談できる場所」として専門の相談窓口を用意することで、周囲の目を気にすることなく怖い、嫌だと感じたらすぐに相談できるようになります。この、いわば「安全地帯」を提供することで、事業所としてもカスハラの事実を早期に発見でき、大切な戦力である職員が知らないうちに被害に遭い休職、離職する前に対応できるようになります。

カスハラ相談窓口は被害を受ける現場職員を直接守ることができ、またカスハラを早期に発見し現場に情報をフィードバックすることで、施設事業所全体の安心感を作り出すことにも役立つのです。

カスハラは断定しにくく、相談しづらい

 

カスハラ相談窓口を設置することで得られるメリット

以上のことを踏まえてまとめると、カスハラ相談窓口のメリットは以下のようになります。

 

●カスハラを受け嫌な思いをした職員の存在をいち早く知り、守ることができる

●現場で発生しているカスハラの実態につき早期に発見、対応ができる

●職員の休職、離職等の人員被害を防ぐことができる

 

これら以外にも、例えば窓口に寄せられるカスハラ相談パターンや被害の程度を分析することで、事業所内で発生しやすいカスハラの内容、カスハラを仕掛ける加害者の傾向や深刻度などを知ることができます。これにより、事業所、法人グループ全体として先手のカスハラ対策を打つことも可能となります。

カスハラ相談窓口の設置の3つのメリット

 

カスハラとパワハラは一緒に窓口としても良い?

2020年6月1日に施行された「パワハラ防止法」(労働施策総合推進法)で、22年4月1日以降、中小企業を含む全ての法人についてパワハラ相談窓口設置が義務化されました。よって、読者の皆様の施設事業所でもパワハラ窓口はすでに存在すると思いますが、今回のカスハラ相談窓口はパワハラと一緒に運用して問題ないでしょうか。

答えは、両者を分けなければならないというのは今のところ存在せず、どちらもハラスメントである点は共通するため、窓口も一緒で問題ないということになります。

ただし、当然ながらカスハラとパワハラは全く別物です。これら以外にも、セクハラやモラハラなど挙げればきりがありませんが、大抵の組織は全部ひとまとめにして(場合によっては、虐待身体拘束の相談も受けるとして)しまう傾向があります。

このように十把一絡げに運用することで、どれも形骸化する危険性があるので、注意が必要です。あれもこれもと盛り込むことで、却って現場職員の事業所に対する信頼を失いかねないのです。

カスハラ相談窓口とパワハラ相談窓口の運用注意点

そもそもパワハラは内部の問題で、カスハラは外部から攻撃を受ける問題であり、攻撃の方向が異なるため、問題の性質も違い対応の仕方も異なってきます。ですので、少なくとも相談窓口はそれぞれの傾向や対処法をしっかり分けて認識した上でマニュアルに則り対処する必要があります。そのためのポイントが「マニュアルの整備」と相談窓口の「教育」です。

 

カスハラ相談窓口はどこまで対応するべきなのか?

雇用主は個々の職員に対し安全配慮義務を負っています(労働契約法5条)。これは今回の法改正前から存在するところ、完全義務化前の状況であっても、カスハラを放置すれば違法となります。職員がうつ病にり患する等被害を受けた場合その損害賠償義務も発生します。

では、どうすれば最低限窓口の形骸化を避けられるのでしょうか。ポイントは、上記義務は飽くまで安全「配慮」義務であり、安全「確保」義務ではない、ということです。職員の心身の安全のために配慮しているといえるためには、最低限「相談をすることで何かが変わる」という効果がなければなりません。最悪なのは、誰がどのような相談をしても、対応する者が「取りあえず様子を見ましょう」とお茶を濁して動かない…という状態です。意を決して相談した職員は、今まさに困っている訳ですからカスハラをする人に一言注意してもらう等、何かしらアクションをしてほしいと願うでしょう。

勿論、ケースによっては確かに様子を見た方が良い場合もあるでしょうが、相談を受ける側、法人は、極力問題解決のために積極的に動くという姿勢を示さなければなりません。ともかく自分達でできるところまで進めることが大切であり、その行動をみて現場職員は法人の「本気度」を感じ取るのです。

相談に対して対応しないといけない

 

どんな人を相談担当にすべきか?

法的には、パワハラについては特段相談担当の資格はなく、相談対応の研修を受けることが条件とされています。カスハラについても同様の定めとなるでしょう。

通常は事業所の責任者や、大きい組織であれば本部長、エリアマネジャーなどある程度全体を把握しマネジメントする立場が適当かと思いますが、重要なことは前述のとおり、相談に親身に対応することです。「忙しいんだからそれくらい自分で何とかして」という空気を出していては、職員を絶望させるだけであり逆効果です。

カウンセラーの資格までは不要かもしれませんが、「現場を理不尽なカスハラから守ろう」「職員のためになりたい」という熱い思いを持った方が適任といえます。

因みに、パワハラの場合は事情が少し異なります。同じハラスメントですが身内の出来事ですから、被害者と加害者、どちらの言い分が正しいか慎重に見極めなければなりません。相談を受ける側も「中立公正」性を意識し、思い込みで判断、行動しない冷静さが求められます。カスハラについてもそれは共通するのですが、大まかな方向性でいえば

カスハラ → 利用者側に苦言を呈することも厭わない正義感(検察官タイプ)

パワハラ → 双方の言い分を丁寧に聞き取り慎重に判断する冷静さ、中立性(裁判官タイプ) といえるでしょう。

カスハラ相談窓口担当者の向いている人

 

担当者の対応力が重要

相談担当は、その対応力をしっかり見極めなければなりません。ありがちですが「経験が長いほどよい」という視点で選ぶと、ジェネレーションギャップ等で「それくらい我慢するべき」「自分が現場にいたときはそんなの当たり前だった」という言葉を新人にぶつけかねません。たちまち職員の信用は失われ、相談窓口は形骸化するでしょう。現場勤務の経験や介助のスキルよりも、傾聴やアクティブリスニングのスキル、理解力・共感力、臨機応変に対応する力が求められます。

また、別の業務と兼務で担当することになる場合は、業務過多になり、その担当者自身が追い詰められるようなことにならないよう注意が必要です。このように考えていくと、組織内部で窓口機能を実効化するよう維持することはなかなかに難しい、ということが見えてきます。専門家の助言を都度受けられる環境がベストです。

 

職員をカスハラから守る体制を盤石にするため、
貴事業所を支える3つの法務サービスをご用意しました。

これまで解説したとおり、カスハラ対策は実効化させようとするとなかなかにハードルが高く、それを維持することも中小規模の事業所ほど難しいといえるでしょう。

本来はまさしくカスハラであるにもかかわらず、矢面に立つ職員本人が躊躇して相談しない、報告しないという事態が起きがちです。そのような中相談窓口を見様見真似で形だけ設置しても、当の職員達に「どうせ無意味だろう」と思われてしまっては輪をかけて問題解決からは遠ざかってしまいます。

事業所側がいくら対応する姿勢であっても、実を伴わない限り逆効果ということにもなりかねません。

そこで、これらを解決すべく、当事務所では2024年より本サービスを展開することとしました。

詳しいサービス内容は下記ボタンよりお進みいただくとご理解いただけると思いますが、本サービスの特徴を簡潔に挙げます。

そこで当事務所では、介護福祉特化の弁護士法人として、自力では対応しきれないとお困りの施設事業所を支えるべく以下3つの法務サービスをご用意しました。

 

①カスハラにピンポイントで対処するリーズナブルな顧問契約!
「カスハラ御守りサービス」

カスハラ特化の顧問サービス

 

・カスハラ問題に関して弁護士が相談対応(月2回、1回30分)。

・カスハラ相談窓口の担当者から、定期的にヒアリングと助言を行いサポートします(2か月に1回のミーティング、1回30分)。

・ご相談内容は、具体的なカスハラの対処法から対策施策の進め方、カスハラに強い組織作りについてなど何でも構いません。

・貴社のホームページやパンフレットの法人概要欄に、顧問弁護士として当事務所を掲載頂けます(魔除けの効果)。

・その他ユニークで効果的なオリジナル特典あり

料金 月額1万円(税別)

 

 

通常の顧問契約(詳しくはこちら)はあらゆる問題に無制限で対応しますが、本サービスはカスハラのみに絞り回数等も上限があるため、廉価にてご提供が可能となりました。

詳しいサービス内容、お申し込み、お申込み前のご相談などは下記ボタンよりお進みください。

 

②相談窓口づくりを丸投げしたい!「相談窓口設置支援サービス」

2ヶ月で万全に設置!カスハラ相談窓口設置支援サービス

「カスハラ対策が重要なのは分かるけど、こちらはクレーム対応の専門家ではないし、現場は一杯いっぱいでとても手が回らないよ。下手に動いて失敗したくないし、いっそのこと全部お任せできないの?」というものぐさな?経営者様のご要望にお応えします。

 

・プロジェクト立ち上げから2カ月で相談窓口を整備

・全体の方向性の確認→カスハラ防止指針、相談対応マニュアルの整備→相談担当の選定→相談担当の教育訓練→現場職員への周知啓発までの流れを一気通貫で徹底サポート

・設置完了後も、1か月後のフォローあり(①のカスハラ御守りサービスへの移行も可)

料金 30万円(目安)

※法人の所在地、規模、状況等により変動の可能性があります。無料ヒアリング後お見積りをお出しします。

 

③スタンダードな顧問契約のご案内

顧問弁護士サービス

 

カスハラに限らず事業所で発生するあらゆるトラブルへの相談対応はもちろん、トラブル発生前の段階で関与し未然に防ぐための防御壁としてお役に立つためのサービスです。

介護福祉事業は人と人の関わりが密で、日々の生活をサポートする仕事ですので、いつ、どんなトラブルが起きるか分かりません。ご利用者とそのご家族が関係してきます。そのどちらもカスハラ加害者になる可能性があります。

仕事をしていると、明らかにカスハラと断定しにくいことも出てくるでしょう。「これはカスハラじゃないのか?」「こういう時はどうしたら良いだろう?」と不安になったり、迷ったりすることも多々あると思います。

不安や疑問をすぐに解決することで、トラブルの芽を摘むことに繋がることもあります。そういう時に役立つのが弁護士です。

できるだけ早い段階で安心して業務を行えるようにしたい。そういう想いを持っている弁護士法人おかげさまでは、現場の「困った」「不安だ「どうしよう」をすぐに相談ができる「おかげさま法務サービス」をご用意しました。

「おかげさま顧問弁護士サービス」の特長は以下の通りです。

 

●いつでもすぐに連絡してご相談いただけます

●電話、メール、どちらでもご連絡可能です

●ほんの些細な「困った」「不安だ」「どうしよう」でも承ります

●トラブルになりそうな予感がする時のご相談もお任せください

●経営者、施設長、職員どなたのご相談も承ります

●作成書類のチェックも行います

●全国で150を超えるご支援先の実績、知見があります

●当事務所は開業以来「介護福祉特化の弁護士法人」です

 

「おかげさま顧問弁護士サービス」に関する詳しいご案内は下記ボタンからご確認いただけます。

また、「おかげさま顧問弁護士サービス」に関する無料ご相談もご用意しておりますので、特にご検討中の方はご利用ください。

「おかげさま顧問弁護士サービス」に関する詳しいご案内はこちらからご確認いただけます。

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