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勤務中の喫煙で懲戒処分を検討する場合の注意点 法的な落とし穴と正しい手順とは
おかげさまです、外岡です。
介護施設の現場では、利用者の安全・衛生に直結する職員の行動管理が欠かせません。その中でも「勤務中の喫煙」は、繰り返されやすいうえに懲戒対応を誤ると法的トラブルに発展しかねない問題です。今回は、当事務所の顧問先である特別養護老人ホームから寄せられた相談をもとに、懲戒処分の適法性と正しい進め方について解説します。
「またあの職員が…」繰り返される喫煙疑惑
顧問先の施設長Aさんからご相談がありました。ユニット内のトイレに電子タバコの強いにおいが充満しており、日中に介護職員が喫煙していた疑いがあるというのです。
該当するB介護士は、2年ほど前から勤務中の喫煙や指定場所以外での喫煙について度重なる注意を受けており、昨年にも夜勤中に同様の疑いで懲戒処分を受けた職員でした。
施設として面談を行い、就業規則に基づき弁明の機会を与えたところ、本人は「吸ってはいないが、状況から疑われても仕方がない。これを機に禁煙する」と述べました。

施設が検討していた処分内容と法的な問題点
施設からの相談時点では、施設側はB介護士に以下の対応を伝えていました。
・施設内完全禁煙・電子タバコの持ち込み禁止
・禁煙できなかった場合は論旨解雇
・懲戒として3か月間、給与の10分の1を減給
一見合理的に思えるこの処分ですが、減給の幅については労働基準法上の制限があります。
・1回の事案につき平均賃金の1日分の半額まで
・複数回の事案でも賃金総額の10分の1まで
月給25万円の場合、減給できる額は1回の事案あたりおよそ4,000円程度が上限です。「3か月・10分の1」という設定は、賃金額によっては労働基準法第91条に違反するおそれがあります。
では、論旨解雇はできるのか
今回のケースでは、昨年頃からの注意・指導歴、昨年の懲戒処分歴があります。今回も同様の状況が再発していることから、次に同じことが繰り返された場合には論旨解雇を行うことは法的に差し支えないと判断されます。
ただし、懲戒解雇・論旨解雇を有効に行うためには、過去の懲戒処分の通知書や始末書などの記録を整えておくことが重要です。書面で経緯が追えない場合、「段階的な指導が行われていた」という主張が立証しにくくなります。

今回の相談の着地点
以上のようにアドバイスをさせていただきましたが、その後、B介護士が「施設では喫煙しない」と誓約書に署名したことで、今回は論旨解雇には至らないこととなりました。
そして、当事務所は今後の再発防止のために「施設内における喫煙禁止の再徹底について」という通知を全職員に配布することも提案しました。問題職員一人への対応にとどめず、職場全体のルールを明文化・周知することが、同種トラブルの予防にもつながります。
この事例から学べること
① 懲戒処分の「幅」には法的上限がある。感情や過去の経緯だけで決めず、労基法の制限を必ず確認する。
② 論旨解雇に備えて、過去の指導・処分の記録を必ず書面で残す。
③ 問題が起きた際は個別対応だけでなく、全体への再周知を合わせて行うことが組織的な予防につながる。
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弁護士外岡 潤
弁護士法人おかげさま 代表弁護士(第二東京弁護士会所属)
2003年東京大学法学部卒業後、2005年司法試験合格。大手渉外事務所勤務を経て2009年に法律事務所おかげさまを開設。開設当初より介護・福祉特化の「介護弁護士」として事業所の支援を実施。2022年に弁護士法人おかげさまを設立。
ホームヘルパー2級、視覚ガイドヘルパー、保育士、レクリエーション検定2級の資格を保有。










