【ミニコラム】訪問介護事業所で発生した理不尽なクレームへの対応

カテゴリ
おかげさま事件簿
(解決事例集)
公開日
2024.08.09
訪問介護事業所で発生した理不尽なクレームへの対応

弊所の顧問弁護士としての対応ケースをご紹介します。顧問契約のご参考になれば幸いです(守秘義務の関係上、一部事案を改変しています)。
当事務所は介護・福祉分野のトラブル予防、トラブル対応に特化しております。日々、様々な事案に対応しますが、中でもご利用者のご家族からのクレーム対応はかなり多く存在します。施設側に問題がある場合もあれば、ご家族側が理不尽なことを伝えてくる場合もあります。自身の家族の健康や生命に関わることであるがゆえにヒートアップしてしまう方もいらっしゃいます。そのお気持ちは重々理解しつつ、適切な対応をしていくことを当事務所では心がけております。

今回は、当事務所の顧問先である、とある訪問介護事業所の施設責任者の方からご相談いただき対応した事例をご紹介します。

訪問介護事業所で発生した理不尽なクレームへの対応

当事務所の顧問先の訪問介護事業所の施設責任者からご相談をいただいた件です。

長年ご利用いただいていたご利用者が急逝されたそうです。これに関して事業所側に瑕疵はありませんでした。しかし、突然ご利用者の長男から連絡が入り、「父は喫煙をしていたそうじゃないか!喫煙をしていれば知らせてくれと言ったはずだ!亡くなったのはお宅らのせいだ!」と地域包括へ怒鳴り込んできたそうです。

事業所側で確認をおこなったところ、ケースワーカーに対して「喫煙をしていたら教えてほしい」という要望は伝えていたそうです。しかし、ケアマネ側には伝達がされておらず、それ故に事業所側へも伝わっていませんでした。

担当したヘルパーは「喫煙している姿は見ていないが、吸い殻があるので喫煙しているというのは理解していた」と話していましたが、ヘルパーがタバコの購入をサポートしたり、喫煙を促したり、喫煙する際のお手伝いをするなどは一切ありませんでした。そもそも、ご利用者自身はしっかりと会話もでき、意思疎通もできる方であり、契約はご本人と問題なく締結していたという状況でした。

それでもなお「ヘルパーが一緒にタバコを吸っていたのではないか」という言いがかりをつけ「対応がずさんすぎる」という主張は収まりませんでした。もちろんヘルパーが一緒に喫煙するという行為は一切ありませんでした。

利用者からのいいがかり

この顧問先は、「このクレームに対してどのような対応をしていけば良いか、気をつけるポイントはあるかアドバイスが欲しい」ということでした。

そこで、当事務所としては、何も知らされていない事業所側は、まずは大きな問題に発展するケースではないということをお伝えし安心していただきました。事業所側は「喫煙をしていたら知らせる」という要望を知らされていなかったため、対応する義務は発生していません。また、事業所側はあくまで「ご利用者が日々の生活を問題なく送れるようにする場」を提供するのが義務であり、ご利用者の健康面について管理や指導をする義務はありません。喫煙自体はご利用者の自由なので、それを止める権利は事業所側には無いのです。ただし、カンファレンスにご家族が参加されて、喫煙をしていたら知らせてほしいという依頼をしていたり、医療機関から喫煙を禁止されている状態であれば、喫煙を報告したり、或いは止めることをしなければいけませんが、今回はそれに該当しませんでした。

このようなアドバイスをしましたが、もし気を付けるとしたら、「今から証拠を残しておく」という策があることをお伝えしました。

今回の件であれば、ケアマネに連絡し「ケースワーカーから喫煙を知らせてほしいという情報は知らされていませんよね?」という確認をとり「YES」という返答を秘密録音して証拠にするという方法が考えられます。このように事実かどうか曖昧なポイントに対して証拠を残しておくことで、万一訴訟問題に発展したり、損害賠償が発生するケースになった場合に有効に使うことができます。

このようなアドバイスを行い、この事業所はクレーム対応をされたそうです。

大切なご家族が亡くなった悲しい気持ちは確かだと思いますし、対応していた事業所への怒りという気持ちも理解はできます。しかし、事業所は医療機関ではないため、専門的なアドバイスはできません。あくまで普段の生活が行えるように支える場であるため、そのスタンスは崩さず主張すべきところは主張すべきです。事業所は他の多くのご利用者の生活を支えているため、業務を止めるわけにはいきません。

顧問弁護士である当事務所は、発生してしまったトラブル対応はもちろんですが、問題になるかもしれないトラブルの芽を早めに摘んだり、トラブルにならないように事前に回避するなどのアドバイスも行っております。

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この記事を書いた人
代表弁護士 外岡潤

弁護士外岡 潤そとおか じゅん

弁護士法人おかげさま 代表弁護士(第二東京弁護士会所属)

2003年東京大学法学部卒業後、2005年司法試験合格。大手渉外事務所勤務を経て2009年に法律事務所おかげさまを開設。開設当初より介護・福祉特化の「介護弁護士」として事業所の支援を実施。2022年に弁護士法人おかげさまを設立。

ホームヘルパー2級、視覚ガイドヘルパー、保育士、レクリエーション検定2級の資格を保有。

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