【ミニコラム】「これって勝手な行動?」現場の判断で動く職員への正しい指導法

カテゴリ
【ミニコラム】おかげさま事件簿
(解決事例集)
公開日
2026.05.25
「これって勝手な行動?」現場の判断で動く職員への正しい指導法

「これって勝手な行動?」現場の判断で動く職員への正しい指導法

介護現場では、予期せぬトラブルや職員の突飛な行動に頭を悩ませる管理者の方も少なくありません。特に、業務時間内における「私的な行動」と「業務上の必要性」の境界線は判断が難しいときもあり、対応を一歩間違えればパワハラや労務トラブルに発展するリスクを孕んでいます。

今回は、ある介護施設での実例をもとに解説します。一見すると明白な服務規律違反に思えることでも、そこには介護現場特有の事情が隠れていました。法的な視点と現場の安全管理、両方の観点から、弁護士がどのようにアドバイスしたのかをご紹介します。

勤務時間中にシャワーを浴びる職員

顧問先の施設の男性職員Aさんは、日々真面目に勤務していました。しかし、施設長からそのAさんに関して当事務所にご相談がありました。

施設長の話によると、Aさんがある日、勤務時間中にシャワーを浴びていたというのです。その時間は5分ほどで、業務に支障が出るようなことはありませんでしたが、施設長としては「勝手なことをされて何か事故でも起こったら大変」ということで、Aさんにシャワーを浴びる理由を聞いてみたそうです。

すると、Aさんは「入浴介助中に、入所者の汗や唾が皮膚に付着したので、介助後の空いた時間でシャワーを浴びた」と説明しました。

「理由としては仕方ないのかもしれない。しかし勤務中のことなので、これは規則違反ではないか」と思った施設長でしたが、「これを指摘しても大丈夫か?パワハラ等と言われないか」と気になったそうです。

勤務時間中にシャワーを浴びる職員

原則ダメだが頭ごなしに叱ってはいけない

法的には、たとえ短時間であっても勤務中に勝手に業務を離れることは、労働契約上の「職務専念義務」に抵触し、服務規律違反になり得ます。

ただし、今回のケースでは「入所者の汗や唾が付着した」という事情があります。衛生面での状態を整えることは、その後の業務を安全・円滑に継続するために必要な処置ともいえ、シャワーを短時間浴びること自体は必ずしも不当とはいえない側面もあります。

しかしながら、Aさんが自身の判断だけで行動した点は問題となります。

そこで、Aさんには「シャワーを浴びた動機は理解できるが、職場では規律に従って頂く必要がある。今後は自分で判断・行動せず、必ず上長へ報告・相談し、許可を得たうえで行動するように」と注意するようアドバイスしました。 また、Aさんが無断で業務から離れている間に万一ご利用者について事故が起こった際、その責任は最終的に施設側が負うことになります。このリスクについてもAさんにしっかり説明し、理解してもらうことが重要であると付け加えました。

そして、その一連の注意指導の経緯や結果を記録しておくことも同じくらい重要です。

パワハラの懸念については、「業務上必要かつ相当」と言えればパワハラは成立しないところ、本件でも「独断でシャワーを浴びたことについて注意する」ことは、よほどのことが無い限りパワハラにはならないでしょう。ただ、理由も聞かず頭ごなしに「何さぼってるんだ!」等と決めつけ怒鳴るといったことは問題です。ご相談者がされたように、まずは理由を尋ね慎重に実態を解明する姿勢が安全といえます。

頭ごなしに怒鳴るのはダメ!理由を聞いて問題行動だけ指摘する

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この記事を書いた人
代表弁護士 外岡潤

弁護士外岡 潤そとおか じゅん

弁護士法人おかげさま 代表弁護士(第二東京弁護士会所属)

2003年東京大学法学部卒業後、2005年司法試験合格。大手渉外事務所勤務を経て2009年に法律事務所おかげさまを開設。開設当初より介護・福祉特化の「介護弁護士」として事業所の支援を実施。2022年に弁護士法人おかげさまを設立。

ホームヘルパー2級、視覚ガイドヘルパー、保育士、レクリエーション検定2級の資格を保有。

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