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強気の問題職員、どう対処?身勝手な職員に振り回されないためのヒント
このコラムでは、タイトルにあるように指示に従わず文句ばかり言うようないわゆる「問題職員」への上司としての対処法について、主に心構えについて説明します。問題職員はどの組織にもいるものですが、そういう人に限って権利主張が強く身勝手なことばかり要求してきます。ですが、そうした我儘に振り回されてはいけません。事例を通じて注意点をご紹介します。
高圧的な態度で周囲を萎縮させる看護師
ある顧問先様の施設に非常勤の看護師が入職しました。人手不足の昨今有り難いものですが、職員の勤務態度に問題があると現場は大迷惑を被ります。
その職員が入職してすぐ、問題が次々と起こりました。
●施設で定めている記録ノートの記入ルールを無視し、感情的な文章を長々と書き連ねる
●先輩職員や上司から指導されてもその通りにせず「私が前に居たところではこれが正しかった」と言って自分のやり方を押し通す
●他の職員が持参したお弁当の中身を許可なく覗き込み、「そんなに栄養のないものを食べるから妊娠できないんだ」と批判する
●些細なミスを指摘されると「これは正当な指導ではない、人格否定だ」と反発し、周りの職員に「この人はパワハラをする」と吹聴して回る
●主任が作成したシフト表に納得がいかないと、他の職員を巻き込み、自分に有利なようシフトを書き換えるよう働きかける
●先輩職員に対し「これやっといて」とものを投げて渡す
●二言目には「訴える」「施設長を訴えてやる」「弁護士に相談している」「慰謝料を取って辞めてやる」「労基署や労働局に通報する」等という
このように挙げればキリが無いほどの問題がありましたが、基本的に協調性が全くなく、他者に対する敬意が欠落した職員でした。
全て施設の方で詳細な記録を取っていたおかげで、実態がよく分かりその点は対応として良いのですが、問題は上司としての対応でした。
相談者である施設長は真面目で優しい方で、この職員とも丁寧に向き合って対応をしていました。何時間もかけて不満を聞いたり、理不尽な言い分があっても腹を立てることなく「こういう考え方もあるのでは?」と助言をしたり。
勿論、問題点を指摘し「もっと協調性をもって業務に当たるように」等と都度注意はしてきたのですが、その都度「パワハラだ」「労基署に言ってやる」等と「反撃」され、そのことを気にし過ぎていたのです。
「相手は弁護士に相談しているようだ。どうしよう」という具合ですが、弁護士としては退職に向けた手を打つことをご提案しました。
それを受けて施設長は職員と話し合い、「退職も一つの選択肢ではないか」「早期退職するのであれば手当を出すことも考える」等と譲歩案を持ち掛けたのですが、相手は頑なであり、「その話をするつもりはない」とにべもありません。
困った施設長は「どうすれば話し合いを進められるか。退職に持ち込めるか」と悩まれていたのですが、実はここに大きな考え違いがあるのです。

対話が成立しない問題職員は押し切る
ここがポイントですが、問題職員、特に本件のように何を言っても反発するようなコミュニケーションが成立しない相手に対しては、こちらも普通解雇に向け淡々とステップを踏んでいくしかありません。
具体的には、日々の問題となる言動について戒告や譴責などの懲戒処分をこまめに出し、反省を促します。始末書の提出や外部研修の受講を命じても良いでしょう。そうしたことを相手は嫌がりますが、指示に応じなければ今度はそのことを理由として重ねて懲戒処分をします。
そのように懲戒を繰り返し、ある程度「実績」が溜まった段階で普通解雇を言い渡します。
解雇は「合意退職」と違い、雇用主の一方的な通知により完結します。事実上相手の言い分を聴くことはありますが、それは飽くまで参考であり、解雇をする権限は100%雇用主側にあるのです。

もしその解雇に不満がある場合は、労働者は不当解雇であるとして労働審判等に訴えることができます。しかし、それは言い換えれば労働者側がアクションを起こさない限り解雇が正当なものとして物事が進んでいくことを意味します。
「もう解雇したのだから、あなたは部外者です。○日以降は施設に来ないように」と告げて職場から締め出し、もし来た場合は警察に通報しても良いでしょう。
極端に思われるかもしれませんが、一人の問題職員により他の大勢の職員が萎縮し不快に思う状況を改善するにはこれしかありません。勿論、その過程の中で相手が改心し、態度を改めてくれればそれで問題は解決しますので、解雇をする必要はなくなります(まず期待し難いことですが…)。
この施設長は、相手に合わせるという意識が強いのか、相手の言動を真に受けて心配したり、相手の協力を引き出そうと腐心していました。
しかしそれでは相手の思う壺です。挑発、かく乱目的で言いたい放題言っているだけですから、無視して手続を進めることです。
明らかに揚げ足取りである指摘や、支離滅裂で利己的な主張に耳を貸す必要はありません。
いい意味でロボットになったつもりで、冷血漢のように粛々と手続を進める姿勢が必要となることもある、というお話でした。
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弁護士外岡 潤
弁護士法人おかげさま 代表弁護士(第二東京弁護士会所属)
2003年東京大学法学部卒業後、2005年司法試験合格。大手渉外事務所勤務を経て2009年に法律事務所おかげさまを開設。開設当初より介護・福祉特化の「介護弁護士」として事業所の支援を実施。2022年に弁護士法人おかげさまを設立。
ホームヘルパー2級、視覚ガイドヘルパー、保育士、レクリエーション検定2級の資格を保有。







