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【初任者研修レポート①】
弁護士としておかげさま法律事務所に参画し、3か月程度が経過しようとしたところ、外岡弁護士から介護の世界を少しでも深く知るために初任者研修の受講を勧めていただきました。
外岡弁護士もヘルパー2級の資格を持っています。その際の研修内容も非常に充実したものとおっしゃっていて、私も是非介護の世界を知りたいと思い、初任者研修を受講しました。
私は、ベネッセの運営する横浜で開校する教室でした。
1クラスの生徒数は私を含め18人。年齢ごとの内訳は、50代及び60代が9人、40代が4人、30代が4人、20代が1人。男女の内訳は、男性が私を含めて4人、残り14人は女性でした。
受講数は全15回。最初の5回は座学ですが、残り10回は実技演習です。
本コラムでは、全3回に分けて、初任者研修の実技演習を通じて私が感じた介護の世界を皆様にお伝えできればと思っています。 まず初回は、車いす移動と着替えに関してです。

研修初日の様子です。何もかも初めてなので少し緊張しています。
意外!?車いす移動は「力」より「配慮」や「理解」が大切
車いすでの移動介助‐初めての実技演習ということで、かなり緊張していたのですが、講師の方が丁寧に教えてくれました。
介護はどうしても力仕事のイメージがありまして、まさに車いすの移乗介助はそのイメージどおり、体力的に大変でした。
しかし、体力的に大変なことよりも、実際に体験してみて驚いたのは、むしろ「力ではなく技術と配慮」だということです。
今から何をするか、まず声掛けをして安心してもらう。段差を越えるとき、体の重心やバランスを意識して、どちら側からアプローチするかを考える。自分が相手のどこに立つべきか、どこを支えれば安心感を与えられるか——。 相手に「任せて大丈夫」と思ってもらえるには、単に支えるのではなく、信頼される所作が必要となるなど。
また、狭い廊下やドアの開閉、床材の滑りやすさなど、環境要因にも注意を払う必要があります。車いすに乗る相手の立場になり、何が問題となりうるのか、何が不快と感じるのかをとらえて行動に移さなければいけません。力も必要ですが、この配慮と、それを行動に移す技術が無くてはならないという気づきを得ました。

法律の文言も、ある結果を得るためには、全ての条件を満たす必要があるのですが、介護においても、環境要因や利用者様のお気持ち、体の効率的な動かし方など、高い品質の介護サービスを提供するには、一つ一つの「条件」を満たす必要がある。
そう思うと、介護の動きはまさに法律を分析することに似た緻密さが求められると感じました。
着替えは介護される方にとっては「生活」の一部
着替えの介助では、「どちらの手から脱がせるか」「どの順で袖を通すか」など、身体状況に応じた判断が求められます。
私たちにとっては普段自然に行っている動作ですが、マヒをお持ちの方や高齢者の方にとっては非常に苦労する作業です。
特に印象的だったのは「本人の尊厳を守る」「自立支援」という視点です。上から目線で“脱がせる・着せる”のではなく、「自分でできる部分をどこまで残すか」に細心の注意を払う。 たとえ時間がかかっても、本人が袖に手を通すのを見守ることで、「生活者としての自分」を保つ手助けになります。

この視点は、法律家として関わるときにも非常に重要だと感じました。弁護士として、自分が思う解決策を提案するということよりも、依頼者の方は何を望んでいらっしゃるのか、依頼者の方の満足いく進め方は何か、という点を改めて考えるきっかけにもなりました。
例えば、介護事故の交渉においても、弁護士は職務上、どうしても補償(お金)の話をしてしまいがちですが、利用者や家族の気持ちになれば、補償よりも謝罪や再発防止といった点を望んでいるかもしれず、また、施設側も謝罪したいけれど適切な方法が分からなかったり再発防止の内容に悩まれていたりするかもしれません。
「らしさ」「尊厳」まで両立できるか
車いす移動も着替えも、介助者には「安全性」という絶対条件があります。しかし、それだけでは不十分です。研修では常に「その人らしさ」「dignity(尊厳)を支える」という言葉が繰り返されていました。
法的に正しい判断、制度上整合する支援内容——それらと、現場の「やさしさ」や「待つ姿勢」をどう両立させるか。
この問いは、弁護士としてだけでなく、これから介護に関わる一人の専門家として、常に自問していきたいテーマです。
次回は「食事と入浴」について、体験をもとにお話ししたいと思います。
弁護士法人おかげさまの弁護士は、介護に関わる研修を受けている「介護弁護士」として現場の皆さまをお支えします
弁護士法人おかげさまは、介護・福祉に特化した弁護士法人です。そのため、在籍する弁護士は介護に関する研修を受講し、介護・福祉の現場の深い理解に努めております。法律はすべての現場に等しく関係し、すべての人に等しく在る存在です。それ故にそれぞれの介護現場のことを理解する力が求められます。だからこそ介護に関する研修を受けることが重要であり、介護弁護士を名乗る以上、今後も時代の変化、社会の変化に応じて学びは絶えず行っていく所存です。この学びや現場理解が弁護士法人おかげさまの強みであると、私は考えております。

弁護士武田 竜太郎
2006年司法試験合格。外資系の弁護士事務所で約7年間、企業法務(M&Aやベンチャー支援など)に従事。企業買収を通じて会計への関心を深め、都内の不動産会社に転職し、社内弁護士として法務部門の立ち上げに携わる。勤務と並行して会計を学び、公認会計士試験に合格。
2025年に初任者研修修了。企業法務・M&A・会計の知識と経験を活かしながら、現在は介護・福祉分野の事業所支援に注力している。









