
これはアリ?契約書・重説の記入を効率化する方法
「措置から契約へ」と移行した今、介護・福祉サービスは提供するにあたり、契約書、重説を確実にご利用者、ご利用者家族(身元引受人)との間で交わさないといけません。
契約意思を確認するために署名(記名)や押印の必要があり、さらに関与者分の部数を処理する必要があります。ご利用者家族が遠方にいらっしゃれば郵送するため、管理や事務作業の負担が伴います。電子契約が商慣習の中で採用されてきていますが、まだまだ介護・福祉業界での運用は浸透していないようです。
人材不足、採用難と言われる昨今、介護・福祉業界ではギリギリの人員でやりくりしている事業所も少なくありません。出来るだけ手間は減らしたい、効率化したいと思う経営者も多いことでしょう。
今回は、そういった事務作業の効率化に関して、「こういった運用は法的に可能か?」というご相談をいただいた事例を解説します。ぜひご一読いただき、運用面でお役立て頂ければと思います。
契約書の写しをお渡しする形でも良いのか?
デイサービスを運営する顧問先様からいただいた相談事例です。
契約締結時に契約書・重説を3部用意し、ご利用者、ご家族(身元引受人)、事業所用に3部印刷し作成しています。そして、それぞれの名前は記名(印字)しますが、押印を依頼し、双方が押印したものを各自が1部ずつ保管するという運用です。
ですが、それでは遠方にいらっしゃるご家族(身元引受人)の場合送付する事務手続などの負担が多く大変であると悩んでいました。
そこで、その事業所では「原本1部だけを作成し、これを事業所が保有し、ご利用者とご家族へは写し(コピー)をお渡しする」という運用に変えられないかというアイデアが出ました。
しかし「その運用は法的に問題ないか?」という疑問が浮かび上がり、当事務所へご相談に至ったというわけです。

法的な問題は無いが、こんな工夫があるとベター
結論から申し上げると、この案を実行することは法的に問題はありません。
契約はそもそも契約書を作成する必要すらなく、口頭でも成立します。しかしそれでは契約をした事実や中身について言った言わないのトラブルになってしまうので、慣習上契約書を作成しているのです。その在り方は、一般の商取引でも介護保険サービスでも変わりません。
そして、例えば不動産取引など重要な契約では同じもの(原本)を二部作成し、当事者がそれぞれ原本を保管するということになります。ですが法的には、そのように「原本を人数分作らなければならない」というルールもなく、一部だけ作ればあとはコピーを配布するというやり方でも構いません。また、「原本を誰が保管すべきか」という点も自由です。
ですから、今回のご相談でも「原本を一部だけ作り事業所が保管する」ということで差し支えありません。ただし、写しを交付するのであればその書面に「この契約書は原本と相違ありません。原本は事業者にて保管します。」という表記を末尾の余白に記しておくとより安全かと思われました。
そのご提案をしたところ、デイサービスではと書かれたシャチハタ印を作成し、都度写しに押して交付するオペレーションに変更したとのことです。
因みに、重要な契約書には割印や契印(ページの綴じ目に押印する)をすることがありますが、これも商慣習に過ぎず法的義務ではありませんので、省略可能です。案外こうしたことを知らず、はんこを何度も押しているところもあるようですので、知っておかれると良いでしょう。

少しでも引っ掛かることがあれば顧問弁護士に相談
今回のご質問は、煩雑化する業務を出来るだけスリム化するべく、契約書の交わし方の改善を行っていた時に発生したものでした。人材不足、採用難の時代、業務を効率化することは経営において重要な課題です。それに取り組まれるのは大変良いことですが、変化が発生すれば自ずと「こういう運用でも本当大丈夫なの?」という疑問や不安が発生することがあります。これを解消すべく、ネット検索をしたり、同業者や行政にアドバイスを求めたりすると、その分の時間的ロスが発生します。また、安心できる確実な回答を得られる保証もありません。
しかし、顧問弁護士であればスピーディーかつ的確な回答をお伝えすることができます。無駄な時間が発生しませんし、不安無く進められるようになります。万一運営指導などで指導(言いがかり)されたとしても、自信をもって説明することができます。
より良いサービス提供ができる、職員が長く働ける環境を作る。そのために業務効率化や業務改善がありますが、早く確実な実行をするために、ぜひ顧問弁護士サービスをご活用ください。

弁護士外岡 潤
弁護士法人おかげさま 代表弁護士(第二東京弁護士会所属)
2003年東京大学法学部卒業後、2005年司法試験合格。大手渉外事務所勤務を経て2009年に法律事務所おかげさまを開設。開設当初より介護・福祉特化の「介護弁護士」として事業所の支援を実施。2022年に弁護士法人おかげさまを設立。
ホームヘルパー2級、視覚ガイドヘルパー、保育士、レクリエーション検定2級の資格を保有。









