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介護福祉経営の「守り」を固める戦略 ~ビジネスパートナーとしての顧問弁護士〜
BCP策定義務化、カスハラ防止措置、有料老人ホームの規制強化の動きなど、社会情勢の変化に伴う規制強化の波は止まりません。事業者は、質の高いサービス提供に加え、常に最新の法知識を備え、完璧なコンプライアンス体制を維持することが求められています。
この複雑な法務リスクから経営の「守り」を固め、本業に集中するためには、専門的なサポートが不可欠です。今こそ、法律の専門家を「トラブル対応係」から「経営戦略のパートナー」へと位置づけ直す必要があります。
なぜ今、顧問弁護士が必要なのか – 法務を「コスト」から「投資」へ
先のコラムで詳述した通り、近年相次ぐルール改定は、介護・福祉経営に「適法経営」という新たな絶対条件を突きつけています。有料老人ホームの規制強化の動き、BCP(事業継続計画)策定の義務化、カスタマーハラスメント防止措置の義務化など、社会情勢の変化に伴う法改正や規制強化の波は止まることがありません。この変化の速度は増す一方で、経営者は常に最新の法知識を備え、万全なコンプライアンス体制を維持することが求められています。
しかし、サービスの質の向上、人材育成、収益の確保という本業に注力すべき経営者が、日々更新される法令や解釈を全て把握し、その対応に追われるのは現実的ではありません。ここに、求められる知識と実際に割くことのできるリソースの決定的なギャップが生まれます。このギャップこそが、行政処分や利用者との訴訟といった深刻な法務リスクを生む温床となるのです。
多くの事業者は、「弁護士は何か大きなトラブルが起きてから相談するもの」「弁護士費用は高額なコスト」と認識しがちです。特に定額の顧問料が発生する顧問契約については、「相談することが無い以上掛け捨てになる」と思われるかもしれません。しかし、この認識は、ルールが激変する現代においては危険であるとすらいえるでしょう。当事務所は、この激動の時代においてリスクヘッジに関する考えを根本から改め、顧問弁護士を「トラブルを未然に防ぎ、事業の成長を法務面から支えるための積極的な策」として位置づけることをご提案したいと思います。

顧問弁護士は、単なる「用心棒」「いざというときの備え」ではありません。確かに旧来の法律事務所はそのようなスタンス(何か起きてから相談に乗る受け身の姿勢)というところもあるかもしれませんが、当事務所は顧問弁護士というサービスを「常に変化する規制環境を先読みし、経営者が取るべき予防策を具体的に示す「安全・安心の事業所経営のパートナー」と位置づけ、その理想像に見合うだけの実力を身に着けるよう日々研鑽しています。医療・介護の領域では「予防」が重要な概念ですが、法務においても同様であり、トラブルをいかに予防し回避するかが安定経営の前提となるのです。当事務所は、そのような経営のための「転ばぬ先の杖」でありたいと願っています。
顧問弁護士の3つの活用領域
顧問弁護士の活用は、トラブル対応の「事後法務」だけでなく、主に「コンプライアンス」「トラブル予防」「離職防止(良好な職員の定着)」という三つの領域で真価を発揮します。
①【コンプライアンス】ルールの事前察知と対応
最大のメリットは、法令や行政指導の動きを早期に察知し、施行前に余裕をもって体制を整えることができる点です。
例えば、令和6年4月の労働基準法改正により、全ての労働者に対する労働条件明示事項が追加され、労働条件通知書の雛形がリニューアルされました。そうしたアップデートについて、顧問弁護士は顧問先様に広く情報発信することでお伝えし、個別にご指摘させて頂いています。
或いはBCP義務化に関しても、顧問弁護士は単に「計画書を作ってください」と言うのではなく、出来上がったものをチェックする中で「地域との連携の文言が抜けていないか」といった法的リスクを最小化するためのレビューをご提供できます。更に「この施設の規模であれば、どのような規定や研修、訓練をすることが適切か。最低限、行政の指導監査を乗り切れるか」といった観点からも、第三者的立場から確認しアドバイスすることが可能です。これにより、事業者は行政のチェックが入る前に、法令遵守の体制を完璧に近いレベルまで整えることが可能となり、行政指導により指摘されるリスクを大幅に低減低減できます。これは、トラブル後の後手の対応に費やす労力や資金の効果とは比べ物にならない、極めて高い「予防投資」効果をもたらすといえるでしょう。
こうした最新情報のキャッチアップに加え、顧問弁護士は利用契約書、重要事項説明書、同意書など、全ての法的文書を徹底的にレビューします。これらの業務は顧問料の範囲内として行います。例えばケアプラン有料化に伴う新たな契約スキームにおいては、どの部分が介護保険料の対象となり、どこからどのような条件で料金が発生するかといった実務的な課題を、利用者保護の視点と事業者の権利確保の視点の両方から明確化します。
法令に準拠した透明性の高い契約管理は、利用者との信頼関係を深める基盤にもなります。万が一ご利用者との関係でトラブルが発生した際にも、法的に整備された文書が強力な証拠となり、事業者を守る盾となります。最終的には弁護士自身が事業所の盾になり裁判等に最後まで対応しますので、最悪攻め込まれて立往生…ということにはなりません。

②【トラブル予防】
顧問弁護士はトラブル発生の前の段階からご相談を受けることで問題の芽を摘み取り、事態の悪化を防ぐことができます。例えば最近急増しつつあるカスタマーハラスメント(カスハラ)の事案では、現場が違和感に気づき「何とかしたい」と思い始めた段階で、躊躇なくすぐに弁護士に相談頂く事が可能です。これにより弁護士は「カスハラ行為を記録(録音)しつつ、今後同じ行為をしないよう相手に求め牽制する」という次の一手をお伝えすることができ、これが先手となり大きなアドバンテージとなります。一方で弁護士が遠い存在であり、頼れる伝手もなく、そもそも相談するという選択肢がない組織は、悪質なカスハラにさんざん振り回され大切な職員を失ってようやく弁護士を探し始める…という流れが典型的です。両者の間で開いた差はときに決定的なものになります。

③【離職防止(良好な職員の定着)】
介護福祉業界は、長時間労働、夜勤、パワーハラスメントといったデリケートな人事・労務問題を常に抱えています。労働基準法の改正が進む中で、不適切な労務管理は、集団的な残業代請求や不当解雇訴訟といった、経営を揺るがす深刻なトラブルに直結します。先述したカスハラ防止措置の義務化も、この労務管理の一環として非常に重要です。
顧問弁護士は、就業規則の作成や改定において、最新の法規制(例:時間外労働の上限規制、同一労働同一賃金、カスハラ防止措置など)を反映させると同時に、介護現場特有の複雑なシフトや賃金体系(例:夜勤手当、資格手当など)に適した、法的に問題ない体制を構築します。年功序列の賃金体系を刷新し、実力評価型に移行するといった大きな改革のアドバイスをすることも可能です。
さらに、職員間のハラスメントや懲戒処分など、経営者自身が判断に迷うデリケートな事案が発生した際も、初動段階から法的見地に基づいた第三者的立場からの適切な指示ができます。これにより、感情的な対応や場当たり的な対応を避け、将来の訴訟リスクを最小限に抑えながら、公正な労務マネジメントを実践できるのです。

「困ったとき」の即応性と安心感
もちろん、予防策を講じても、トラブルがゼロになるわけではありません。運営指導や予期せぬ監査、重大な事故、利用者との訴訟などが発生した際、顧問弁護士の存在は、事業所に安心感をもたらします。
行政指導・監査対応
運営指導が行われる場合、実施当日に向けて準備を行いますが、どういった書類を準備すれば良いか、押さえるべきポイントはどこかなど、運営指導対策で押さえるべきポイントのアドバイスができます。特に初めての運営指導の場合や責任者が不慣れな場合、顧問弁護士のサポートはストレスと負担軽減に大きく役立ちます。
また、行政指導が入った際、経営者は動揺し、不慣れな対応でかえって事態を悪化させがちです。顧問弁護士は、行政からの文書や要求の法的意味を瞬時に解釈し、提出すべき資料のリーガルチェックを行い、行政との交渉を代行またはサポートします。迅速かつプロフェッショナルな対応は、指導や処分を最小限に食い止め、事業継続への悪影響を抑制します。
第三者委員会の設置と活用
不祥事や重大なトラブルが発生した場合、企業が内部だけで調査を行っても、公正性が疑われ、信頼回復に時間がかかることがあります。外部の弁護士を第三者委員会の委員として起用することで、調査の公平性・透明性を確保し、再発防止策を法的な観点から策定できます。これにより、企業の信頼回復プロセスを迅速かつ効果的に進めることが可能になります。
法務は「コスト」ではなく未来への「必須投資」
激しいルール変更の波は、経営上のリスクになります。しかし同時に、この波は、他社が対応に追われる間に、いち早く法的に完璧な体制を築いた企業にとっては「他社との差別化(チャンス)」となり得ます。コンプライアンス体制が整っていることは、利用者への安心感、地域社会への信頼はもちろんですが、採用面でも役立ちます。優秀な人材を惹きつける魅力のひとつにできるはずです。いわば攻めの経営です。
介護・福祉経営者の方は、「この業界に特化しコミットする顧問弁護士」という最強のビジネスパートナーを味方につけ、法務を「コスト」ではなく、企業の未来の信頼と持続可能性を確保するための「必須投資」として位置づけるということを検討してみてはいかがでしょうか。

弁護士法人おかげさまは介護・福祉・医療特化の弁護士法人です
以上、顧問弁護士を味方につけて、今後も発生するであろう法改正やルール変更の荒波を乗り越えていくことのご提案でしたが、弁護士にも経験値の差があります。どの弁護士も法律家という括りでは同じですが、弁護士ごとに普段から対応している得意な案件や業種、テーマが異なります。
介護・福祉業界は、ご利用者、ご家族、職員、行政が関与し、さらに人と人が密接にかかわりあう業界です。ご利用者の生命や健康に影響を及ぼしますし、虐待や違法な身体拘束が発生した場合は経営危機に陥ることもあります。
業界特有のルール、慣習、現場の理解がある弁護士を選ぶのがより良いでしょう。
「弁護士法人おかげさま」は2009年の開設以来、介護・福祉・医療に特化した弁護士法人として事業所の皆様をお支えしております。代表弁護士をはじめ所属弁護士は「初任者研修」を受講完了しており、現場に頻繁に足を運び専門誌に寄稿するなど、業界や現場の理解に努めております。
当事務所の顧問弁護士サービスがございますので、ぜひご覧ください。
また、介護・福祉現場で役立つ情報発信を行っており、以下のコンテンツを無料でごらんいただけます。ぜひご覧ください。
①YouTubeチャンネル
チャンネル登録者数1万人を超える介護・福祉現場のトラブル解決に関するYouTubeチャンネルです。
②介護トラブル解決サイト
有料級コラムが無料で読み放題となっています。法律に関する解説から介護・福祉現場で発生したトラブル事例解説まで幅広く解説しております。
③おかげさまメルマガ
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弁護士外岡 潤
弁護士法人おかげさま 代表弁護士(第二東京弁護士会所属)
2003年東京大学法学部卒業後、2005年司法試験合格。大手渉外事務所勤務を経て2009年に法律事務所おかげさまを開設。開設当初より介護・福祉特化の「介護弁護士」として事業所の支援を実施。2022年に弁護士法人おかげさまを設立。
ホームヘルパー2級、視覚ガイドヘルパー、保育士、レクリエーション検定2級の資格を保有。











