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室内に放し飼いの犬が狂暴…サービス提供を断っても大丈夫?
少子高齢化に伴い、ペットと暮らす高齢者世帯が増えました。ペットが家族の一員になっている方も少なくありません。そのため訪問介護で訪れるご利用者のご自宅に犬や猫などのペットがいることも珍しくなく、それがご利用者と職員の間でのひとつの話題になることもあります。
しかし、家族の一員のペットといえど、外部からやって来る訪問介護職員に対して危害を加えてしまう危険性は常につきまといます。
今回は、訪問介護事業の顧問先様よりいただいた、ご利用者宅のペットに関するご相談内容をご紹介します。
室内で犬を放し飼いにするご利用者
訪問介護サービスを提供するA社は、ご利用者Bさんのご自宅へ伺った職員よりこんな報告と相談を受けました。
「Bさんのご自宅では犬1頭が放し飼いになっているのですが、散歩に連れて行ってもらえていないせいかストレスが溜まっているようで私に激しく吠えてきました。訪問時に逃げたり、私たちが嚙まれたりしないか不安です。Bさんが常に犬を監視してくれているわけではないので、せめてサービス提供中は犬をケージに入れていただくようにお願いしましたが、「大事な家族だから嫌だ」と拒否されました」
報告を受けたマネージャーは、「確かBさんの息子さんが一緒に住んでいたが、息子さんからお願いしてもらえないだろうか?」と考えました。そこで息子さんに連絡し、サービス提供中は犬をケージに入れていただけるように相談しましたが、「うちの犬は聞きわけがいいのでその心配は無用です。大体、ヘルパーはそういったことも含めて対応するサービスではないのですか」と言い、逆に非難される始末でした。
この状況からマネージャーは「サービス提供中に犬を逃がしてしまったり、職員が噛まれて怪我をすると大変だ。Bさんが犬をケージに入れるのを拒否し続けるならサービス提供の終了も検討すべきだろうか?」
と考え、当事務所へ相談されました。

些事にみえても取返しのつかないことになる前に
大切な家族であるペットをケージに入れたくないというBさんのお気持ちは理解できますが、事業所としてはご利用者のペットを逃がしてしまうことも、職員が怪我することも避けなければいけません。そして、ヘルパーの仕事は飽くまでご利用者のケアであり、ペットの管理は業務範囲外です。
今回の場合は、ご利用者とその息子さんにお願いしても聞き入れてもらえない以上、事業所の意思を書面等ではっきりと伝え、ご理解頂けない場合はサービスの辞退を申し出ることが妥当といえるでしょう。

そのアドバイスを受けた事業所は、担当ケアマネとも連絡を取った上で改めてBさんと話し合い、
「サービス提供中にペットを逃がしてしまうリスクや職員が犬に噛まれたり引っ掛かれたりしてケガをするリスクなどもあるので、せめてその間はケージに入れて頂く必要がある。何かあってからでは手遅れであり、犬が逃げ出すようなことがあってもこちらは責任を負いきれないので、対応頂けなければサービス提供を続けることも難しい」
とはっきりとお伝えしました。
その結果、「お宅に引き上げられては困る」とのことで、Bさん側はケージに入れることを了解され事なきを得ました。ケアマネは地域の犬のケアサービスを見つけ、散歩の代行サービスを追加することで犬も落ち着きを取り戻したようです。
頑固で応じてくれないときは?
もしBさんがこのような事業所からの説得に応じなかった場合、すぐ契約解除できるかは難しいところです。信頼関係破壊と言い得るものではありますが、利用者が直接危害を加えるものではなく、また犬が実害を引き起こしていないため時期尚早と評価される可能性はあるといえるでしょう。このようなときは、複数回説得を試み、また現場で犬がいかに危険な状態かを秘密録音等で証拠化し証拠固めをすることが定石です。その上で満を持して解除に踏み切ります。
現場で役立つ情報をコラムにしてお届けしております
今回のご相談のように判断が難しい現場は多々あると思います。法律やルールがあっても、
「何を基準に考えたら良いのだろう?」
「この判断で法律やルールを破ることにならないか?」
「逆にこちらが不利にならないか?」
という疑問や不安を抱くことも少なくないでしょう。
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弁護士外岡 潤
弁護士法人おかげさま 代表弁護士(第二東京弁護士会所属)
2003年東京大学法学部卒業後、2005年司法試験合格。大手渉外事務所勤務を経て2009年に法律事務所おかげさまを開設。開設当初より介護・福祉特化の「介護弁護士」として事業所の支援を実施。2022年に弁護士法人おかげさまを設立。
ホームヘルパー2級、視覚ガイドヘルパー、保育士、レクリエーション検定2級の資格を保有。









