
弊所の顧問弁護士としての対応ケースをご紹介します。顧問契約のご参考になれば幸いです(守秘義務の関係上、一部事案を改変しています)。
当事務所は介護・福祉分野のトラブル予防、トラブル対応に特化しております。日々、様々な事案に対応しておりますが、今回はトラブルに関することではなく、「弁護士の選び方・断り方」についてです。
事業所ごとの判断にはなりますが、顧問弁護士を依頼しているところもあるかと思います。そうでない場合でも、事業所運営をしていると、少なからず弁護士に相談、依頼してトラブルを解決させたという経験がある方は少なくないのではないでしょうか。
トラブルが発生する、あるいは法律面で困った時に相談する先として弁護士は認識されていますが、法律に関する上位の国家資格と位置付けられているからなのか、どうしても事業所に恐縮されてしまう傾向があるようです。時には「弁護士との付き合い方」について誤った認識で必要以上に気を遣って頂くこともあり、逆にこちらが恐縮することもあります。
今回は、当事務所にご相談に来られたとある事業所責任者の方とのやり取りを元に、弁護士を選ぶ際、断る際の考え方について解説します。
顧問弁護士を替えても大丈夫なの?
当事務所へご相談にいらっしゃった方とお話をしている最中のことです。ご相談が一通り終わり、トラブル解決の道筋が見えました。ありがたいことに当事務所をご評価くださり、顧問契約のご依頼を頂きました。
ご契約に関するご質問にお答えする段階で
「実は、今契約している顧問弁護士がいるのですが、そちらとの契約を止めることは問題ないのでしょうか?」というご質問をいただきました。
その事業所では、先代の理事長時代に契約した顧問弁護士(介護福祉を得意としているという訳ではないそうです)がいらっしゃるものの、迅速かつ具体的なアドバイスを得られないので今回当所にご相談された。そちらと契約をこの際止めたいと思うけれど、そもそも問題ないのか、どうすればよいのかと不安を抱かれておられたようです。
実はこれは、よくあるパターンです。筆者も、最初のうちは正直「顧問弁護士がいるのに、なぜそちらに相談されないのだろう」と不思議に思うこともありましたが、どうやらそれだけ介護福祉の領域は専門性が高く、特化していなければ対処できないケースも多いようです。
これについては「弁護士を選ぶのは依頼者の自由ですので、契約書に従った手続きを経れば顧問弁護士を替えることは問題ありません。」と回答しました。
弁護士の世界も言ってみれば競争社会ですので、「顧問弁護士を決めたらずっとそこに依頼しないといけない」というわけではありません。変に義理堅くいる必要はないのです。
事業内容、経営者のその時々の状況や考え方などによって、どの弁護士に依頼するべきかの判断は変わってきます。弁護士も人間ですので、考え方や対応の仕方に違いがあります。もちろん接した時に感じる相性というものもあるでしょうが、最重要要素はその弁護士の「得意分野」です。それらを総合的に判断し、ご自身の組織にとって最もプラスになると思う弁護士を選んでいただければと思います。
顧問弁護士を替える理由を言わないといけない?
「既に契約している弁護士を断るということに負い目を感じる」という方がいらっしゃいますが、契約を中途解約する理由は不要です。単に「●●月いっぱいで契約を終了させていただきます」と、書面や電話等で伝えれば問題ありません。法的には、弁護士との契約は委任契約であり、双方がいつでも解約できることが原則とされています。
理由を聞かれるかもしれませんが「法人として総合的に判断した結果です」とお伝えすれば良いでしょう。なお、場合によっては「当期の残りの期間分の顧問料をまとめて払ってほしい」と言われる可能性はありますが、これは言ってみれば「女々しい」ことであり、プロフェッショナルである以上潔く身を引くことが士業の矜持であると考えます。対応しづらい場合は、当職が代わりにご説明することも不可能ではありません。
顧問弁護士を替えることで事業所として不利益を被ったり、間違っても訴えられるということはありませんので、そこはご安心頂ければと思います。
歴史ある事業所や法人の場合ですと、先代の経営者時代に契約した顧問弁護士がいる場合があります。先代の経営者の同級生、友人など懇意にしている方が顧問弁護士となっている場合もあるかと思いますが、事業にとって最も有益だと思われる弁護士を選ぶべきだと筆者は考えます。現に、全国的規模の事業所は複数の顧問弁護士事務所と契約し、「労務トラブルはA事務所、介護事故ならB事務所」等と使い分けることもよくあります。
時代が変わればご利用者やそのご家族、施設で働く職員の価値観、ライフスタイルが変わりますし、社会情勢も変わります。事業所がおかれる経営環境も変わるため、自分たちにとって最適な弁護士を考えて選ぶことは正しい考え方といえるでしょう。
当事務所は、介護福祉分野のみに特化した弁護士法人として15年目を迎えますが、現在全国に150を超える顧問先をご支援しております。
介護福祉分野でのトラブル対応事例が豊富にあり、トラブルを未然に防ぐ研修実績、ご支援の実績もありますが、弊所が何より誇りとしていることは、僭越ながら介護現場をリスペクトし、現場職員を守りたいという核にある情熱です。
コンプライアンスの要請がますます高まり、制度が複雑化する一方で利用者家族からのクレーム、ハラスメントも厳しくなる昨今、法律の専門家から常にアドバイスを得られる体制をつくることは必須といえるでしょう。たった一人のクレーマーや問題職員が、施設を崩壊させる時代です。
当サイトには顧問弁護士に関するご紹介ページもございますので、ぜひご覧ください。まだ顧問弁護士契約をされていない方で顧問契約を真剣にご検討頂いている方には20分無料のオンライン面談もご提供しておりますので、お気軽にお問合せください。

弁護士外岡 潤
弁護士法人おかげさま 代表弁護士(第二東京弁護士会所属)
2003年東京大学法学部卒業後、2005年司法試験合格。大手渉外事務所勤務を経て2009年に法律事務所おかげさまを開設。開設当初より介護・福祉特化の「介護弁護士」として事業所の支援を実施。2022年に弁護士法人おかげさまを設立。
ホームヘルパー2級、視覚ガイドヘルパー、保育士、レクリエーション検定2級の資格を保有。