身体拘束廃止未実施減算の落とし穴

介護福祉特化弁護士が解説!身体拘束廃止未実施減算の落とし穴

『身体拘束に関する取り組み』について

該当施設・事業所は、下記の項目を満たしていない場合は減算となります。

・身体的拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の入所者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録すること

・身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を3月に1回以上開催するとともに、その結果について、介護職員その他従業者に周知徹底を図ること

・身体的拘束等の適正化のための指針を整備すること

・介護職員その他の従業者に対し、身体的拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること

 

介護施設を運営するある顧問先様から「身体拘束の取り組みの未実施減算を受けてしまった」という報告がありました。数百万という返還が発生し悔しい思いをしたわけですが、何を怠ったのかと言うと「研修をしなかった」とのことです。

この身体拘束廃止の取り組みは、令和6年4月1日以降ショートステイや多機能系事業所にも対象が拡大されましたが、特養、老健等の介護保険施設ではそれより以前から義務とされており、記録・委員会の開催・指針の整備・従業員に対する研修が要件となっています。従って、慣れた取り組みであり「当然できている」と思われるかもしれませんが、いざ実地指導が行われると、思わぬところで足元を掬われることがあるのです。

それが「研修を新規採用時に都度実施する」という要件です。

 

やむを得ず身体拘束をする場合の要件

 

研修を「新規採用時に実施とは

研修については、各事業ごとの運営基準解釈通知に「定期的な教育(年2回以上)を開催するとともに、新規採用時には必ず身体的拘束適正化の研修を実施することが重要である。」と定められています。冒頭のケースでは、顧問先は定期的な研修をしていたのみで、新規ごとの研修をしてこなかったわけです。

例えば、年度の半ばで即戦力として2人の非正規職員を採用したとして、法人はその2名に向けて研修をしなければなりません。数十名に対しまとめて実施することは忘れませんが、このように採用の都度、となると見過ごしてしまうこともあろうかと思います。

しかし、厳しい世界ですが、「うっかりしていました」という言い訳は一切通用しません。自動的に未実施減算を受けることになりますが、これが相当な額となります。利用者全員分について、所定単位数から1日あたり10%の減算なので、例えば毎月700万円の報酬額だとすると、10%で月70万、3ヶ月分で210万となり、結構な痛手です

加えて、現場で不当な身体拘束や記録の不備が見つかれば身体的虐待と認定され、「改善計画書を出しなさい」となり、もう大変です。

教訓としては「定期的な研修とあるけれども、新人を採用時にその都度、研修をしなくてはいけないんだ」としっかり確認し実施することとなりますが、新人には他にも教えることが沢山あります。

 

教訓:定期的な研修とあるけれども、新人を採用時にその都度、研修をしなくてはいけな

 

研修はどうやるべきか

「研修の時間は何分以上、何を伝えればよいのか」といったご質問いただくことがありますが、研修の中身に関するルールは全くありません。極論1分でもいいわけです。そして、大事なことですが「生身の人間が都度話をしなければならない」というルールも存在しません。そうであれば、YouTube動画や、オンデマンド形式で受講することも可能であり、当事務所では研修動画を無料公開しています。これなら、各自のスマホで隙間時間に視聴することもできますね。こういう時代だからこそオンデマンドでの個別学習をお勧めします。

 

研修をしたことを記録に残す

研修をしっかり実施しても、まだ油断してはなりません。例えば実際に使ったレジュメをただファイリングしただけでは、チェックする行政側からみれば「レジュメを印刷しただけで、実際はやっていないのではないか」という疑いを払拭できないのです。

そこで、何月何日に実施したという証拠となるもの、例えば受講時の写真や、受講後の各職員にアンケートや感想を書いてもらうなど、何かしら痕跡を残すことが必要です。

或いは、受講後の理解を試すためのちょっとしたテストを実施するのも効果的です(テストのデータを無料公開しています。こちらからダウンロードしてください)。

勿論、研修の最終目標はご利用者に適切なケアを提供し人権を守ることですが、折角頑張って取り組んだ研修の事実を証明できるようにすることも大事な対応です。これらを証拠に残しておけば、確かに受講して理解が定着したとわかるので、それらをセットにしてファイリングしておきましょう。

 

研修時間に関するルールは無い。たった 1分の研修でも「研修を実施した」といえてしまう。録画した動画やオンライン形式での研修を活用して効率的な研修実施ができる。実施記録、レジュメ、レポート、アンケート回答、受講風景写真など実施の証拠を残すと良い。

 

こういった新人研修のための『身体拘束とは何か。なぜやってはいけないのか。どういった時に例外的に許されるのか』を、虐待防止とセットで学べるよう、コンパクトに動画にまとめたものをYouTubeで公開しています。是非ご活用ください。

 

 

当事務所でサポートできること

弁護士法人おかげさまは、介護福祉の現場トラブル解決に特化した法律事務所として、これまで多数の身体拘束事例のご相談を受け、トラブルを解決して参りました。代表の外岡弁護士は顧問先の身体拘束適正化委員会外部委員を務め、また身体拘束に関する著作を多数出版しており、この問題のエキスパートであるといえます。

そのような豊富な経験を基に、現場職員向けの身体拘束に関する内部研修の実施、実施される施設側へのご支援を致しております。本コラムで解説した身体拘束廃止未実施減算の落とし穴のような、事業者側が陥りやすい過ちを事前に回避するためのアドバイスも実施できます。

もちろん上記以外に、委員会の開催方法や記録の取り方、ご家族への説明方法などについて網羅的にアドバイスし、必要に応じ書式等の雛形をご提供、或いは貴施設にフィットする規定を作成することができます。

特に本コラムで述べた「定期的な研修の実施」においては、継続的な実施のみならず、新人入社の際に都度実施するなどイレギュラーな実施も発生します。そのため、予め備えることが難しいこともあるため、継続的なご支援を提供できるよう「顧問契約プラン」をご用意しております。

下記ボタンより顧問契約プランの詳細をご覧いただけますので、ぜひご覧ください。

 

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